12月1日に第2回目のSIMT(自己洞察瞑想療法)の実践会を終えました。
5名の方にご参加いただきました。
今回は,前回のおさらいから始めて,SIMTプログラムの第2回「いつでもできる呼吸法」、第3回「感情を知る」の内容について,そのエッセンスを要約して説明,実践しました。
今回のポイントは、次の5つでした。
1.「今,ここ,自分のこころ」
2.さまざま心理現象に名前を付ける
3.注意作用を自由に使う
4.行動活性化
5.感情の特徴を知る
私たちは,過去の失敗や辛い出来事を思い出して,気分が落ち込んだり,怒りの感情が沸いたり,その時の体験が目の前にあるかのように体験されて,苦しむことがあります。
また,これから起こる厄介な未来の出来事を考えて,不安になったり,緊張するなど,不快な体験をすることがあります。
私たちが生きている場所は,いつも「今,ここ」ですが,過去や未来に囚われて,心が今,ここから離れてしまうときがあります。
過去や未来に心が留まり,あれこれと辛く考えてしまうと,苦しみが増したり持続します。
過去や未来の実態は,今この瞬間に目の前にあるのではなく,「ここ」で起きている現象でもありません。「今,ここ」で心の中(頭の中)で作られた現象です。
意識されることは,すべて今の心の働きが作り出したものです。
自分がいる現実の世界は,「今,ここ」しかないです。
苦しみを解消するには,心の働きによって作り出された過去や未来の内容,苦しみを増したり維持するような思考を受け流して,今ここの瞬間に苦しみを生まない行動を取ることが大切です。
自分を苦しめないためには,心の働きを理解し,自覚することが大切です。
マインドフルネスSIMTでは,呼吸法や日常の行動時に,心理現象を観察し,心の働きを理解し,自覚する練習をします。
今回の実践会では,心理現象を観察して名前をつける練習をしました。
次々に移り行く「今,ここ」の瞬間において,自分の心理現象をすべて現在進行形で観察します。
うつや精神的に辛い状態にあると,自分の心をありのまま知ることが出来なくなり, 価値崩壊の反応パターンにつながりやすいですから,自己の心理現象をよく知り,「価値実現の反応パターン」を習得することが大切です。
呼吸法をしながら,何かを考えていることに気づいたら「思考」,何かを思い出していることに気づいたら「想起」と名前をつけます。
感情が沸き起こったら「イライラ」「悲しみ」,痛みなどの感覚に気づいたら「痛み」などと名前をつけます。
さまざまな現象が起きて,意識がそれらに向かっても「それがある」と自覚して,また呼吸法に戻ります。
心理現象に名前をつける作業は,俯瞰的に自分を見守る視点が必要です。事実を言葉で表現することで,今ここで起きている問題を解決のための方法を論理的に理解することにもつながります。
この様なトレーニングを重ねることで,心を「今,ここ」という場所に置くことができ,また苦しみや苦悩を生み出す心の作用から離れることが可能になります。
このほかに,実践会では,気分を落ち込ませたり,苦痛や苦悩を悪化させる否定的・嫌悪的な思考に入り込まない方略として,注意作用(分配,移動,持続)を自由に使いこなす練習も行いました。
呼吸とともに,見ること,聞くことを同時に観察する(分配)
見ること,聞くことに順番に注意を移動していく(移動)
分配と移動を長時間続ける(持続)
これらは,注意の分配,移動,持続スキルを向上させますので,自分を辛くする否定的・嫌悪的な考えへの囚われから離れる力や,重要ではない刺激や環境,感情に振り回されずに仕事など目の前の大切なことに取り組む力を育むことになります。
最後に,感情の特徴について触れて,今回の報告を終えようと思います。
苦悩や心の病には,不快な感情が関わります。
SIMTでは,苦悩や病気の症状が持続し,価値(こうありたいという願いや目標)を阻害する衝動的な行動へとつながる過程を「価値崩壊の反応パターン」と呼んでいます。
例)簡略化すると以下のようになります。
きっかけ:病気の症状など辛いことが起きる
→思考:辛いことを考える(つらい,もう嫌だ)
→感情:不快な感情が起きる(憂うつ,不安,怒りなど)
→価値崩壊の行動:衝動的な欲求や行動(家族に八つ当たりする,引きこもるなど)
感情は単独で起こるのではなく,その前にはきっかけ,思考があって,感情が起こります。そして,感情はその後の行動に影響します。
感情は現在の状況を教えてくれるセンサーのようなもので,何か不快な感情が意識されたときは,心や体で何かが起きています。
感情が起きるパターンを良く理解することが,苦悩や心の病気の改善・予防,そして適切な対処を取るうえで大切になります。理解が不十分な状態では,対処を誤って,苦悩をかえって大きくすることや長引かせることにつながります。
なぜ私は今,辛くなっているのか,不快な感情が起こった時に,どのようなきかっけで,思考をはじめ,感情を起こし,辛いと感じるか,そして感情的になった時,どのように反応しているのか,確認します。
この時,感情が起こるのは自然な心の働きですので,無視したり,嫌ったりするのではなく,謙虚に受け止めましょう。
そして,辛いことがあっても,様々な心の作用を観察し,自分の願いを崩さず他者を傷つけることなく,建設的な行動を決意して実行する意志作用を働かせます。
すなわち,たとえ辛いこと(感覚,感情,状況,症状など)があっても,それに過剰にとらわれることなく,自分の心の作用をよく観察し,知り(洞察し),受け入れて,自分の願い(人生の価値)を実現するための行動を選択する練習をしていきます。
例)きっかけ:辛いことが起きる(病気の症状など)
→観察:自分の心の作用をよく観察して,何が起きているのか気づく
→受容:症状や辛いことはやむを得ないこととして受け入れる
→価値実現の行動:自分の願いに沿って行動する(症状があっても呼吸法や運動に挑戦する)。
先の「心理現象に名前をつける」「注意作用を自由に使う」とともに,これらの実践は決して簡単ではありません。
実践は,はじめは難しいものですが,新しい心の使い方を覚えますので、当然のことです。
実践すればするほど,素早い判断と意図的な対応が自然に出来るようになってきます。
皆さん,SIMTの効果を得るためには日々の積み重ねが大切です。
日々の実践をお続けください。
次回の実践会は,2019年1月12日(土)です。
ご興味ご関心のある方はご連絡をお待ちしております。
どうぞよろしくお願い致します。